5月21日(火)、さいたま市大宮区桜木町にある「認定こども園 聖愛幼稚園」を訪問しました。
「自然がいっぱいの幼稚園」とお聞きしていましたが、正直なところ伺うまでは『大宮徒歩5分で?』と思っていました。でも!それは本当でした!
木のぬくもりが感じられる新しい園舎。決して広くはないけれど、園庭の木々は5月の若葉がキラキラ。桑の木がありました。実がたわわ。こどもたちが、
「これは(オレンジ色の実)はまだ食べられないよ」
「これ(黒い実)はもう食べられる」
と言って、私に一つ黒い実をとってくれました。生まれて初めて桑の実を食しました(笑)。ちょっと酸っぱい野の甘さでした。
沿革
1926年、旧大宮市庚申塚に幼稚園の前身が開設。1948年、日本聖公会大宮聖愛教会に附属する幼稚園として創設されました。
2021年4月。園舎を新しくし、幼保連携型認定こども園 聖愛幼稚園としてスタート。
新しい園の2階に続く階段には、建替え前の聖愛幼稚園の写真が飾ってありました。大きな銀杏の木。そのはっぱを箒で集めるこどもたち。古いけれどかわいらしい園舎。その写真を立ち止まり見ていた私に
「むかしのようちえんだよ」
と一人の男の子が声をかけてくれました。
設立当初の保育理念を継承し、次代へつなげていくことを目指す「認定こども園 聖愛幼稚園」をご紹介しましょう!
認定こども園 聖愛幼稚園の保育
ねがい
聖愛幼稚園は、キリスト教に基づく少人数の保育を行っています。
キリスト教保育とは、目に見えるものだけではなく、目に見えないものを大切にする保育です。こどもたちはそれぞれが違った存在です。神さまから託されたそのひとりひとりを大切に、こども・保護者・保育者がともに育ちあえる、地域に根差したこども園でありたいと思います。
3つの柱
こころを動かしてすごす
うれしい、楽しい、おもしろい、悲しい、悔しい、つらい、恥ずかしい等の様々な感情を体験し、生活する中で、自分の感情を知り、自己理解していくことを大切にしています。
泥んこになったり、けがをしたり、自然の中で身体を感じる経験をしながら過ごしていきます。
また、本物に出会い、心を動かしながら生活していくことも大切にしています。
しなやかなこころを育む
ストレスにさらされても、折れずに柔軟に対応し、成長していく力を育んでいきます。
そのために欲求を我慢する経験や、思うようにならないことなどの経験を大切にしています。
多様な人たちと関わりながら生活する
将来、こどもたちは社会に出ていきます。
その社会の中で、多様性(考え方、外見、価値観、文化等)を受け止め、柔軟に対応できる人となるために、幼児期に他者と自分の違いを知り、受け止めながら、それぞれが特別な存在であることを学んでいくことが大切です。
そのために、思いのぶつけ合いやけんかなどの経験も大切にしています。
園長先生からのメッセージ
こどもたちの豊かで幸せな未来のために、「認定こども園 聖愛幼稚園」が 今、大切にしていること
こども
- 困ったときにはいつでも助けてくれる保育者がいること
- いつでも自分に向き合い、理解してくれる保育者がいること
- いろいろな人たちがいることを知ることのできる場所であること
保護者
- 困ったときには、いつでも相談ができる場所であること
- こどもの育ちや保育について、共感だけでなく、課題とそれについての対応策を一緒に考えることのできる園であること
保育者
- 困ったときにはいつでも助けてもらえる場所であること
- 一緒に解決策を考え、保育を楽しめる集団であること
こどもたちの豊かで幸せな未来のために、子どもを取りまく社会や大人もまた、豊かで幸せに暮らすことができるように、見えないほど小さな世界の片隅で歩んでいきたいと思います。
認定こども園 聖愛幼稚園のこどもたち
優しい虫博士
都会ながら園庭には虫もいっぱい。ダンゴムシを手のひらに。アゲハの幼虫はミカンの木に2匹も!。こどもたちの穏やかで柔らかな笑顔が印象的でした。
アゲハの幼虫
アゲハの幼虫を見せてくれたのは男の子でした。この子のことを他の子が
「〇〇ちゃんはむしはかせなんだよ」
と言っていました。
「どこにいたの?」
と私が聞くと、彼はミカンの木のところまで連れて行ってくれました。
「この葉っぱしか(アゲハの幼虫は)食べないんだよ」
と彼が私に説明してくれていると、ひとり、また一人と子どもたちが集まってきました。その中にちょっと小さい女の子がいました。学年が一緒になった異年齢保育をしている聖愛幼稚園だからこそ、もあるでしょう。その女の子が「あ。」と言ってはっぱの蔭を指さすと~。虫博士の彼は「なぁに?」と言ってそのあたりを覗きました。
「あ。幼虫だ!」
「すごい、〇〇ちゃん、よくみつけたねぇ~」
と虫博士は黒い小さな虫を手に取りました
「これは2齢幼虫だよ」
「2れい?これも幼虫なの?どっちが赤ちゃん?」と私。
「こっち(2齢幼虫)があかちゃん。大きくなるとこっち(先に見つけたみどりいろの幼虫)」
へぇ~~~!
虫博士にはいろいろな園で時々お目にかかりますが、小さい子に対して「よくみつけたねぇ~」の言葉はとっても新鮮!幸せな気持ちになりました。
好きなことに夢中になるだけでなくちゃんと、人とかかわり、年下のこどもの発見を温かく受け止められる 優しい聖愛幼稚園の博士でした。
心が育つ(卒園生の保護者のお話)
今回、卒園生の保護者の方のお話も伺うことができました。その方は
- 「聖愛幼稚園にお世話になって本当に良かった」
- 「心が育った、心を育てていただいた」
- 「心は見えないけれど一番大切なこと。聖愛幼稚園で育てていただけたと思っている。」
と仰いました。お子さんはもう中学生だが、テストで悪くてもそんなに落ち込まず、ここをがんばったのは良かったと、自分を認めているのがすごい。親は口を挟みたくなるがその様子を見てこの子なりにちゃんと考えていると納得した。
人にも優しい。
私はこのお話を伺って、お子さんは立派に育っていらっしゃると思うと同時に、お子さんのことをこんな風に一人の人として大切に、尊敬の気持ちをもって見守っていらっしゃる保護者も素晴らしい、と思いました。
聖愛幼稚園で育ててもらったという思いも感じつつ、こんな素晴らしい保護者の方に選ばれるのが聖愛幼稚園なのだな、とも思いました。
代表レポート
亀岡副園長先生のおはなしから
皆で話し合う聖愛幼稚園
幼稚部のリーダー、サブリーダーはいるが皆で話し合って決めている。
「リーダーが若い人を育ててくれる。若い人もよく動き考える」
子どもの心を大切にする聖愛幼稚園
- 大勢の人がいる場面が苦手な子は一定数いる。ムリはさせない。けれどもその子に寄り添いながら集団に入れる場面を逃さないようにしている。
- 遠足のお迎え
幼稚園の子 親が迎える
保育園の子 親が迎えに来ない←寂しくなる。それなら私たちが迎えに行こう。駅で別れる。迎えに来た保護者を見ることのない場所に移動して、保育園の子たちは保育園に残っていた先生が「おかえり!」と言って園まで帰ることにした。 - 行事・保育内容 毎年同じにはしない
参考にはするがその年のその子たちの様子を見て考えて先生たちで話し合って決めている。これらには、保護者が理解してくださっており、去年の方が良かったいうようなことはない。入園前にも、十分に説明を行う。
- 行事は見せるためのものではない
- 怪我もします。
- 保育者の目の届かない場所もあります。また、あえて見ていないふりをして背中で感じていることもあります。
- お昼寝
3歳児は全員がお昼寝をする。今年の子は5月の今、4歳5歳も横になるとすぐ寝てしまう子が多い。ライトをダウンさせて絵本を読んで、横になれるように。途中で目が覚めた子が静かに遊べる部屋も用意している。お昼寝もその年によって。その子にそって考えている。 - 縦割り保育
学年での切り方だと育つことを急がせてしまう子がいる、待たせてしまう子も。その子のペースで取り組めるように。下の学年の子がいることで自信をもってゆったり育っていける。また、年上の子どももモデルとして、成長できる。今の家庭における兄弟の少なさ、などを考えると縦割り保育はよいことがあるので、ここ数年縦割り保育を選んでいる。
一方で、学年という取り組みもする。特に年長学年。みんなのためにパンを焼いてふるまう。お泊り保育。など。
先生たちの働き方を工夫する聖愛幼稚園
- ノンコンタクトタイム(子どもに接しない時間)を作っている。
- 担任は決めているが担任以外が親に引き渡したりその日の様子を話したりすることもある。
- みんなで幼稚園の子を育てるという考え方をしている。
- おたより帳はない。そのかわり「〇月の〇〇ちゃん」(ポートフォリオ)を作っている。皆で書く。
- ICT化。先生たちは大いに利用している。話し合えなくても子どものこと、明日のこと、共有できる。
亀岡副園長先生のお話で印象に残ったこと
「こども園にしたことに迷いはなかった」
こどもたちをめぐる環境。子育ての姿がどんどん変わってきている。4時間の保育では今の子どもや家庭に合わなくなってきた。
保護者の方々に望むことはある。だけど、伝えても実行できない保護者もいる。例えば上靴を週末に持ち帰って洗って欲しいと伝えても、持ち帰らない場合もある。
今は園側の受け止め方や考え方を柔軟にしている。「洗わない」や「持ち帰らない」には、理由や背景がある、と。それならば、子どもと一緒に園で上靴を洗うことがあってもいい。子どもが自分で洗い方を覚えるきっかけにもなるし、なんとかなる。
子どもたちが聖愛幼稚園に通い続けるには、こども園になること以外に選択肢はない。迷いはなかった。
例えば、お弁当作りが大変な保護者もいるのではないか。親自身がお弁当を作ってもらった経験がない人もいる。それならば・・・、園が変わろう。全員を給食にした。おいしい給食。食を大事にする園に。
幼稚園で大事にしてきたことはこども園になっても残している。
たとえば・・年長の園外へのお泊り保育。
幼稚園からこども園への移行は大変だった。人もたくさん必要だった。
でも、卒園生の保護者で調理師や栄養士の免許を持っている方が働いてくださることになった。保育者でも卒園児の保護者の方が働いてくれている。
皆に助けられている。
取材を終えて
亀岡副園長先生の静かな語りの奥に、秘めた熱意を感じました。
「先生たちは優秀で良い人ばかりなの」と亀岡副園長先生。
そう言える副園長先生とそれにこたえる先生方。
今、日本の保育環境は激変しています。
子ども家庭庁ができ、国はこども園の普及を進めます。
けれども
保育園からこども園になったり、幼稚園が預かり保育を長時間実施したり、もちろん幼稚園からこども園になるところも・・。ある程度、施設の形や子どもたちの時間的な過ごし方には枠組ができてきても、実際に子どもがどう過ごすか、どんな経験をしているか、教育的要素をどのようにおさえているかなど、地域や各園の実情によってまちまちなのではないでしょうか。
でも、こどもたちは「今」を生きています。そしてその「今」は、子どもたちの「未来」に繋がっています。
認定こども園 聖愛幼稚園は、「今」を生きるこどもたちのために、こどもたちが「未来」にわたって幸せに生きる力をつけるために、園(総称して)はどうあったらよいのか、を真剣に考え先生たち皆で頑張っている園でした。こどもたちのため、は、もちろん保護者のため、働く保育者のためでもあります。
これからの日本の保育をリードする開拓者(園)の一つ!と思いました。
認定こども園 聖愛幼稚園 カッコいいです!
認定こども園 聖愛幼稚園 基本情報
園名
学校法人聖公会北関東学園 認定こども園 聖愛幼稚園
住所
〒330-0854 埼玉県さいたま市大宮区桜木町2丁目172