「BFCレポート」をスタート!:こども・保育に関する現状・問題について取材&報告

初回は、学童保育に関するレポートです。題して

“学童保育に入れない!”~ママ・パパの心配~

10月21日。世田谷区子ども・若者部を訪問し、2025年(令和7年)スタートの新しい学童保育についてお話を伺いました。

世田谷区役所。建築家前川國男が設計、1969年竣工。現在建替え工事中

はじめに

2016年、「保育園落ちた!」の投稿に象徴される保育所(保育園・こども園)待機児童問題が注目されましたが、保育所が増えたこと、少子化が進んだことなどから待機児童数は大きく減少しました。

2024年の現在、主に共働きの保護者の心配は保育所入所から学童保育入所に移行しています。

日本経済新聞から
「見えぬ待機学童 実態は1.7倍」

学童保育(※)の受け皿が足らない。子どもを預けたい共働き世帯が増えているのに、保育所と比べて整備数が少ないためだ。2024年の待機児童は約1万8千人と過去最多となった。日本経済新聞の調査では、国の定義から漏れる隠れ待機児童を含めると、実態は1.7倍に上る。原因は子育て世代のニーズを国が正確に把握できていないことが多い。
中略
人口減少が著しい島根県は、保育所の空き部屋を学童保育向けに改修し、23年度は9施設で80人を受け入れた。
東京都世田谷区も25年度から1年生を対象に保育所の空きスペースを活用した学童保育を展開する予定だ。

※学童保育:国による通称は「放課後児童クラブ」。保護者が働いていて日中家庭にいない小学生を対象に、放課後の遊びや生活の場を提供する。2015年に改正児童福祉法が施行され、「おおむね10歳未満」だった対象が6年生までに広げられた。希望者が多くて対応できず、利用を3年生までに制限し、低学年を優先的に入所させている自治体も少なくない。

日本経済新聞のこの記事に注目し世田谷区役所に取材を申し込みました。

世田谷区子ども・若者部 児童課 児童福祉推進担当の廣津郁未係長が対応してくださいました。

世田谷区における学童保育の現状

  • 世田谷区は以前から、すべての公立小学校61校に学童クラブ「新BOP」※を設置していた。
  • そのため、今まで民間が学童保育に参入することはなかった。 
  • 保育園への待機児童を減らす施策により保育所入所が可能になったことにより、保育所卒所後の子どもたちが小学生になり学童保育入所を希望した。
    ⇒その子どもたちは、定員を設けていない「新BOP」へ通うことになった。 
  • 「新BOP」の現状は?
    「大規模化」:200名を超えるところもある。
    「狭あい化」:空き教室などの受け入れ場所が足らない
    「職員の手が足らない」:一対一以上の対応が必要となる要配慮児も受け入れている。  ⇒現場は限界に近い状態に

※「BOP」「新BOP」:世田谷区HPより

  • 「BOP」
    世田谷区では放課後子供教室を「Base Of Playing(遊びの基地)=BOP(ボップ)」と呼んでいる。小学校の施設などを活用して、子どもたちに安全・安心な遊び場を提供し、異なる年齢の子どもたちが共に遊ぶ中で、創造性・自主性・社会性を培い健全育成を図ろうというもの
  • 「新BOP」
    新BOP学童クラブ(放課後児童クラブ、いわゆる学童保育)とBOP(放課後子供教室)を合わせた事業。学校施設を利用して一体で世田谷区が運営している。

世田谷区が考えた“もっと何かできないか?”

令和4年度

民間の力を活用することに。大規模「新BOP」の近くに民設民営学童(世田谷区で規定する施設・人員等の基準に沿って、区の補助を受けて民間事業者が運営する学童クラブ)を配置

令和6年度

4月現在 区内5カ所に設置されている ⇒ それでも足らない!!

もっと何かできないか?

保育園に学童を!

私立認可保育園・私立こども園の施設内で学童事業を始めよう!空きスペース利用なので規模は小さいかもしれないけれど・・。

保育園側も考えてくれた⇒保育園にもメリットがある!

  • 園児(特に年長児)に刺激になる
  • 卒園後の子どもの様子がわかることで保育内容の振り返り、向上につながる
  • 卒園児の利用が中心となることが予想され、園に兄弟姉妹がいる場合は、保護者の送迎等の負担が軽減され、子育て応援となる

こういった取り組みにより、世田谷区では令和7年度から
1年生を対象に保育所の空きスペースを活用した学童保育が始まることに!

取材を終えて

廣津係長のお話では、「どうしたらこどものことを中心に考えられるか」という言葉が何度も使われました。お話を伺い、私は、世田谷区は“待ったなし”の現状に対しても“こどものことを中心に”考えようとしてくれたのだと感じました。

廣津係長に質問をしました。

「保育園に学童、という新しい取り組みを実現するにあたって大変だったことは?」

初めての取り組みということもあり、一からの制度設計の部分だったり、公募してどれくらいの提案があがってくるのかといった心配はあった。
しかし、保育所の学童を用意していけば、保護者に(こどもに)複数の選択肢を提示できる。
・通う学校の「新BOP」
・学校近くの「民設民営」学童保育
・私立保育園内「学童保育」1年生のみ

「いよいよ来年から保育園での学童がスタートですね。今のお気持ちは?」

どうなるかな、とは思いつつ、楽しみではあります!

最後に

日本が、女性も男性も、こどもがいてもいなくても働き続けられる社会になるといいですね。でも、こどものことをもう少し社会全体で、みんなで考えましょう!
特に、入学したばかりの1年生の中には、

  • みんなと賑やかに過ごすことが好きな子。
  • 学校を終えたら静かに過ごしたい子。

いろいろな子がいます。あたりまえのことですね。

学校と同じ場、同じメンバー、大人数で過ごすことに(自分でも気付かないけれど)頑張って適応している子がいるかもしれません。これも自然なこと。大人の社会が理想に向かう中で、こどもにとってはどうなんだろう、という視点も大事にしていきたい、と思います。

その意味で、区の学童保育を整備されるお立場の廣津係長が「こどもを中心に」という言葉を何度も使ってくださったことを心から嬉しく頼もしく感じました。 取材へのご丁寧な対応、ありがとうございました!

世田谷区役所 子ども・若者部 児童課

世田谷区の試み 
「保育園内で1年生の学童保育 2025 春スタート」
楽しみにしています!!