認定こども園 世田谷区立多聞幼稚園は 環状七号線の東の住宅地にあります。この辺りは下北沢・三軒茶屋にも近く、広い世田谷公園や、私立、国立の中学・高等学校、総合病院もあって、便利で住みやすい町です。
昭和48年(1973)に開園した区立多聞幼稚園は、平成28年(2016)4月1日より「幼稚園型認定こども園」となり、今までの幼稚園の教育活動を大切に引き継ぎながら、教育・保育を一体的に行っています。令和4年に創立50周年を迎えました。
三宿の杜なごみ保育園とは連携園となっていて、卒園児を2号認定(保育園枠)に受け入れています。 今回は、公立(区立)幼稚園のこれからの姿をたくましく切り開いている「認定こども園 世田谷区立多聞幼稚園」の訪問レポートです。
認定こども園 多聞幼稚園の教育目標
『わくわくがいっぱい 笑顔があふれる幼稚園』
上記を目指し、人権尊重の精神を基調に、心身ともに健康でたくましく、感性豊かな幼児の育成を図るため、3つの教育目標を掲げて教育を進めています。
- 元気な子ども
自分のやりたい遊びに意欲的に取り組んだり、様々なことに興味・関心をむけ、関わったりすることができる子どもを育てます。 - 思いやりのある子ども
遊びや生活の中で様々な友達と関わることで、友達の思いや考えに気付き、“友達と遊ぶ のって楽しいな”と友達のことも考えて行動しようとする子どもを育てます。 - 考える子ども
物事をよく見て考え、自分なりに工夫したり試したりしながら、物事を諦めずにやり抜く 「非認知能力」を育み、遊びや生活を楽しめる子どもを育てます。
子どもたちの豊かで幸せな未来のため「認定こども園 多聞幼稚園」が大切にしていることは?
個に応じた指導・援助
幼児一人一人の特性を理解し、学級の一員として互いに学び合える関係性や居場所をつくり、その子の良さを伝えたり、その子の表現を肯定的に認めたりし、一人一人が安心して幼稚園生活を送れるようにします。
せたがや探究的な学びの推進
その子なりのやり方やペースで繰り返しいろいろなことを体験してみること、その過程自体を楽しみ、その過程を通して友達や教師と関わっていくことの中に幼児の学びがあります。多様な体験をし、様々なことに興味や関心を広げ、それらに自ら関わろうとする気持ちがもてるようにします。
キャリア・未来デザイン教育の充実
ドキュメンテーションやポートフォリオを活用し、幼児自身がその時の感情や遊びの内容を振り返ることで、自分の成長に気付き、自信をもって行動できるようにします。また、保護者の方にも回覧や掲示板で知らせ、学級懇談会や個人面談の機会に保護者からの声を聞かせていただき、遊びから学ぶことへの大切さが分かるようにします。
食育推進の取組
給食に出される旬の食材や栄養素について、栄養士や調理師から話を聞いたり、健康診断や体重測定の機会、絵本、表示等を活用したりして、幼児が自分の体に関心をもち、大切にしようとする気持ちがもてるようにします。
地域社会との協同
遊びを中心とした生活や地域の関わりを通して、体験を重ねる教育活動を進めています。近隣中学校の職場体験やボランティア活動、近隣小学生との交流活動、大学生のボランティア活動やインターンシップ、教育実習等で様々な人との関わる機会を通し、憧れの気持ちをもてるようにします。
多聞幼稚園のこどもたち
教育課程前の時間。朝の子どもたち
多聞幼稚園は認定こども園なので、1号認定のお子さんと2号認定のお子さんが通っています。2号認定のお子さんは7:15からご家庭の状況により随時登園しますが、1号認定のお子さんであっても、朝の預かり保育を利用し、教育課程に係る教育活動(幼稚園教育)の登園(9:00)の前に幼稚園にくるお子さんがいます。
この時間は、幼稚園の門(教育活動としての幼稚園の門)は使用せず、職員室横が入口なんですね。職員室の先生が「おはようございます」と明るく声をかけていました。保護者の方々は簡単な挨拶を交わしながらも足早に園を出ていかれました。皆さん、お仕事の方がほとんどでしょうか。でも、園にお子さんをお任せできて、安心されたでしょう。今日も、行っていらっしゃい!
ゆったりとした月曜日の朝
この日は月曜日。9:00になって幼稚園の門が開いて、園長先生、副園長先生がお子さんと保護者の方をお迎えします。
登園したお子さんたちは靴を履き替えます。ゆっくり靴箱前のテラスに座って履き替えるお子さんもいれば、ささっと履き替えて2階の保育室(きっと年長さんですね!)に上がっていくお子さんも。先生に少し甘えるように話しかけるお子さんもいました。先生はそんなお子さんたちのお話をニコニコと聞いていらっしゃいました。
ゆったりとした明るい園の朝でした。
環境を通しての教育
幼稚園の教育は環境を通して行うものである、と言われます。
次はこうしましょう、こうしなくてはいけません、と大人が活動を強く示すのではなく、子どもが自ら興味関心を抱けるよう環境を工夫していくのです。好奇心にあふれた子どもたちは「おもしろそう」「やってみたい」と自ら環境に働きかけ、遊びの中で様々な経験をし、学んでいきます。
「多聞幼稚園のステキなあれこれ」ご紹介しましょう!
5歳児保育室 虫の観察コーナー
イメージを形にしやすい製作コーナー
園訪問レポート
園長先生・副園長先生のお話から
教職員44名!
多聞幼稚園には1号認定のお子さん、2号認定のお子さんがいます。加えて預かり保育利用により登園・降園時間もまちまちです。先生方も当然シフト勤務が取り入れられています。
クラス担当、預かり保育担当、栄養士、事務員、用務主事、個々のお子さん対応の介助員。今年度はなんと総勢44名!(私立幼稚園から見ると羨ましい?)
先生の数が多いことは良いことばかりと思われがちですが、実は、大変なことも多いのでは?多聞幼稚園ではシフトやチームを組んで子どものためにより良い保育を実践されているとのこと。園長先生・副園長先生は、情報共有を工夫し、職員がコミュニケーションをとっている、保護者からも大いに理解を得られているとのこと。さすがです!
お子さんの介助員のお話を伺うことができました。 朝、お子さんの欠席やそれに伴う当日の担当業務変更がすぐわかるようになっている(掲示)とのこと。それは想定内とのことです、と。先生だけでなく介助員の方々もプロですね。すごい!
伝える、ということ
保護者の方々は忙しく、長い文章のおたよりを読む時間がありません。先生たちの勤務時間と保護者の登降園時間が合わないこともあります。担任の先生がお子さんの様子をその日のうちにおうちの方にお伝えするのは難しい、とのこと。まさしく現代の保育施設がどこでも抱える悩みでしょう。
お子さんのステキな場面は、やっぱり日を置かずにお伝えしたい、先生たち。多聞幼稚園はその悩みをそのままにはしておきません。
「毎日のドキュメンテーション」
ドキュメンテーション(写真と短めのコメントで保育の様子を示す)を作って、それを玄関にファイリング・掲示。先生たちは2:00の降園後、ささっと作っていくのだそうです。 ICTフル活用ですね。先生たちの保育記録にもなります。
〈幼稚園における教育、学び、育ち〉は目に見えなくて保護者には実感しにくいかも??
ドキュメンテーションは、ただ単にお子さんの笑顔を写すアルバムではなく、先生の「ねらい」や「子どもたちの気づき・学び」をわかりやすく伝えるツールでもあるようでした。
多聞幼稚園の保護者の方々はドキュメンテーションを通して、子どもの遊びの価値をよくわかってくださることでしょう。数年後、
「あ~、あの頃、あんな風に幼児期を過ごしたことで、今、ウチの子はこんなステキな力を得ているんだな!」
と、多聞幼稚園での遊びの力!を実感されるのではないか、と思います。
進化する多聞幼稚園
多聞幼稚園は世田谷区立幼稚園で認定こども園になった第1号園です。
移行当時の先生方はたくさんのご苦労があったと思いますが、今の先生方もそのバトンをしっかりと受け取られて、さらなる進化を遂げていらっしゃる!と感じました。
- この6月からは3歳児プレ保育が始まります
- 令和7年度からは3歳児保育が導入
- 近隣の小学校・中学校と連携
- 給食の導入。給食室は園内に。食育に栄養士さんたちも協力
多聞幼稚園の創設当時、先生たちは公立幼稚園として世田谷区の「幼稚園教育」をより良いものにしていく、という使命感をもっていました。この少子化の現在、区立幼稚園(こども園としても)には公立園としてあらたな役割が期待されています。
訪問を終えての帰り道、私はとってもワクワクしていました。役割を力に変えて、新しいことをどんどん工夫し試していく先生たちの明るさを感じたからです。多聞幼稚園はパワフル。これからも子どもたちとの日々を先生方ご自身が楽しんでいくのだろうと感じました。
基本情報
園名
認定こども園 世田谷区立多聞幼稚園
住所
〒154-0005 東京都世田谷区三宿2丁目25番9号