東京都練馬区「まちの保育園 小竹向原」を訪問しました

 「まちの保育園 小竹向原」は、小竹向原駅から徒歩4分。ここは、都心に直結する好アクセスでありながら、緑の多い閑静で落ち着いた町でした。
「まちの保育園(こども園・保育園)」は東京都内に2024.10月時点で6園あります。
運営はナチュラルスマイルジャパン株式会社。実は、BFCのブログで株式会社運営の園訪問は初めて。恩師A先生に「企業立園でこんなところがあるよ」とご紹介していただいての取材です。
株式会社の運営?一般的な保育園とどう違うのかな?へー、びっくり!とか、おー、ステキ!って思ったりするかな?と、ワクワク、ドキドキの気持ちを抱いて伺いました。皆さんもそう思いますよね?

「まちの保育園 小竹向原」の教育方針(建学の精神)

一人ひとりの存在そのもの(being)をよろこび、互いに育み合う、コミュニティを創造する。それは、私たちは市民として何をするべきか(doing)の前提となり、いかによりよくあるか(well-being)につながる。

  1. 一市民としてのこどもの尊重
    こどもが一市民として歓迎され、その権利を尊重され、また、現在を最もよく生き、よりよい未来をつくり出す力の基礎を培う。
  2. こども時代のいまを豊かにする家庭との連携
    こども時代は、“準備期”ではなく、人間性の土台を築くため、それ自体が意味を持つ人生最初の段階であり、それを豊かなものとするために、保育者・保護者が連携する。
  3. こどもも地域も生きるコミュニティの創造
    こどもは社会・文化の中で育つ。地域の資源や文化を、こどもの社会参加にいかし、充実・発展させる。保育園を拠点として地域のつながりを強め、地域全体の福祉や、家庭支援につなげる

子どもたちの豊かで幸せな未来のために
「まちの保育園 小竹向原」が大切にしていることは?

法人理念

  • 一市民としてのこどもの尊重
  • 家庭との連携
  • こどもも地域も生きるコミュニティの創造

を踏まえ、多様な体験、出会いを大切に、こどもたちの有能性(人間の可能性)を社会に発信し、こどもの育ちとまちづくりを支える拠点となる。

  • ねらいや手法は、時と場合によって変化することを理解し、否定から始まらない対話を通して、子どももおとなも対等に、各々の個性の違いや自由を認めあい、変化を楽しみながら互いに育みあう関係作りを推進する。
  • 保育所保育指針の養護と教育(5領域)の視点を大事にし、子どもたちの個別の姿、集団の姿に応じて、子どもたちが、社会や文化の中で、自分で考え、行動・表現できるように適切な環境を整える。
  • 子どもたち自身が、生活のリズムを獲得し、協同的な社会性を身につけられるよう、愛着関係の築かれた保育者(その他の職員も)が、子どもたちのパートナーとして関わり、遊びや生活を通して総合的に保育する。

 「まちの保育園 小竹向原 」のこどもたち

過去の取材では、たとえ初めての町でも訪問先の園はすぐにわかりました。だって、子どもたちの声が聞こえてきますし、なんとなく「園の気配」がするからです。
ところが、「まちの保育園 小竹向原」はすぐに気づきませんでした。町名地番はこの辺りなんだけど・・。

「まちのパーラー(カフェ&ベーカリー)」を見つけました!あ、あった!「まちの保育園」の表札。インターフォンを押し、中に入れていただいたものの、あれ~?奥にもう一つの入り口。どうやらあそこが保育園の入り口みたい。ガラス越しの下のフロアにやっと子どもたちの姿が見えました。 

訪問しての第一印象は・・外観が保育園っぽくなくてわからなかった、こと!

「親子で楽しむ会」を楽しみに

アトリエ(少しずつ棚や机で仕切られていたのが印象的でした)では製作(「親子で楽しむ会」の準備かな?)をしている子どもがいました。先生と一緒のこどもたちとは別のところで、「おまつり(※)の準備しなくっちゃ!」と互いに話しながら紙など必要な材料を出して作り始めていた子たちがいたのにはびっくりしました。

※ もうすぐ開催の「親子で楽しむ会」のこと

こどもたちが主体である、と強く感じました。こどもたちにとって、この日の遊びはただ単に楽しくて遊ぶもの、だけではなくって、「親子で楽しむ会」があるから、それに向かっての活動、という意識があるんだな、と思いました。また、アトリエにこんなものがありました。

園庭でこどもが発見した化石?でしょうか。こどもにとってはまさしくティラノサウルスの足の骨?か歯?
なのでしょう。
こどもの発見を大事にしてくれる先生たち❤
「きっとそうだよ、もしかしたらそうだよ」というこどもの気持ちを大事にしてくれる先生たち❤

鬼きめ

園舎の真ん中には、園庭がありました。中央が小高くなった土の園庭です。日除けシートが掛けられていましたが、切れ目が入っているシートでした。風が抜け地面にはシートの影ができていました。風と影と・・・。子どもの感性を豊かにする環境で、繊細な配慮ですね。

ところで、皆さんは、「鬼きめことば」をご存じでしょうか?呪文(じゅもん)みたいな言葉です。こども集団によって少しアレンジが違うのですが
「鬼きめ、鬼きめ、誰が鬼かな・・・」
を言いながら、片足を出し合い靴を順に指さしていきます。鬼きめことばが終わったところで指さされた靴の子が鬼になります。
実は、この日、なかなか鬼が決まりませんでした(笑)
Aさんが「誰が鬼かな・・」まで言ったのですが、BさんがAさんの言葉の途中で「ちょっと待って!ズレてるの、けっこうズレてるの!」とちょっとキツめの口調で遮り、鬼きめことばをはじめからやり直してしまいました。
何がズレていたのかな?靴の並び方?誰かの靴を飛ばしちゃった?そばで見ていた私にはよくわからなかった(笑)

Aさんは「え~?」と言いましたが、それ以上は言い返さず、私は鬼きめの輪から少し離れたところで鬼きめの様子を見ていました。他の子たちはBさんと一緒に新・鬼きめことばを大きな声で言い始めました。Bさんの鬼きめことばはなめらかで「天の神様の言うとおり!」まで言い終わり、さっと鬼が決まって鬼じゃない子があちこちに逃げ回りました!Aさんも元気に走って逃げていきました。

大人の世界なら、どうして、Aさんの鬼きめことばじゃダメだったの?と思った人がいたかもしれない。でも、子どもの世界は時々こんな風に、小さな不条理があります。でも、不条理の中でこどもたちは楽しく遊ぶのです。大人は正しいことが好きなので、つい「Bさん、途中で止めちゃだめなんじゃない?今、Aさんが鬼きめことばを言ってる途中じゃない?」なんて仕切ってしまうかもしれません。でも、大人のこんな正しい(?)仕切りがこども同士の育ちをジャマするかもしれません。
今、こどもたちは、不条理に気づかないか、あるいは少しくらい不条理であっても、なめらかでステキなBさんの鬼きめことばで鬼が決まっていくことが楽しいのです。そのうち、誰かから「なんだかBさん、ヘンじゃない?」と気づくようになるでしょう。Bさん自身が成長して自分が言いたい気持ちを我慢できるようになるかもしれませんね。

ここでは、子どもがちゃんと育つことを保障されているな、子どもが自ら育つことを大人が信じているんだな、と感じました。ステキなことです。

昼寝の準備

お昼寝はアトリエにコット(簡易ベッド)でします。年長の数人がせっせとコットを並べていました。
(お当番なのかな?それともやりたい子がしているのかな?)と思い、先生に伺うと、この子たちはお手伝いをしたくて、しているのだそうです。
こどもたちの『もうすぐお昼寝だからコットを並べなくちゃ』という気づきや、『先生のお手伝いをしたい』気持ちを大切にして、お手伝いをしたい子に手伝ってもらっているとのことでした。

でも先生は、
「今の時期はやりたい子にしてもらっているけれど、これから他の子たちも気づいてほしい、お昼寝の準備とか生活を整えるとか、の意識を持ってもらいたい。いつその方向に向けていくか、どうやって向けていくか、考えているところです」と。
そうなんですね、さすがです!こどもに全てを任せているようでありながら、実はちゃんと指導の方向性や時期・方法を考えていらっしゃるのですね。
毎年この時期にこうする、という決まりきった指導計画ありき、ではなく、目の前の子ども達をしっかりと見ながら、これからの育ちをどう支えていくか練りながら過ごしていらっしゃるのだ、と思いました。

園訪問レポート

もっと知りたい。まちの保育園

「まちの保育園 小竹向原」はこの日の訪問だけでは足らない、奥の深さ・魅力があるもっと知りたい場所でした。何について知りたかったのか、というと~

「まちの保育園」には「小竹向原」だけでなく、どの園にもCCという立場の人がいます。コミュニティコーディネーターという専任職員です。子どもの興味・関心に寄り添いながら、子どもを真ん中に子どもたちに様々な人格・才能との出会いや経験を持ってもらえるよう保育者と連携をとって環境を整えていく。取り組みは正しさよりもおもしろさで。 ですって!
こんなとをしてみたい、と子ども・保育者・あるいは町の方々の考えを実現できるようあれこれ繋いでいく?みたいなお仕事かな?もっと知りたかったなぁ。

まさしく地域に開かれ、繋がるスペースでしょうか。心地よい空間でした。
こんな風に使いたい、と地域の方から申し出があることも、とのこと。ここに、どんな人がどんなふうに集うのか、LIVEで見てみたいなぁ。

保育室はアトリエと呼ばれていました。こどもたちの日々の探究探索・創作活動を広げていくための場所とのこと。そこで使われる素材を集めた素材庫がありました。
そこに集まったものは「廃材や自然物」とのことですが、私がいろいろな園で見てきた素材庫とは少し違いました。

自然物だけでなく、シンプル。形も色も抑えられています。
形や色の主張が、子どもたちに強く働きかけてしまい、結果、子どもたちのイメージや創造する力・創作する力に影響を与えることを避けるため?と思いました。
よくあることとして、廃棄するものだからそれを使おう!という発想です。でもここでは、廃棄するものを生かす、リサイクルが主目的ではないのではないでしょうか。あくまでも“子どもたちにとって”が一番。新鮮でした。そうですよね。再利用はここでなくてもできるはずです。そのことを忘れがちな私たち。

最後に

魅かれたのはまちの保育園の「保育理念」

一人一人の存在
そのものを喜び
互いに育みあう
コミュニティを創造する

もっと知りたい。そんな思いがこの日の取材を終えた感想です。
もしかしたら、近くに住んでいらっしゃるこの町の方々は、もう、「まちの保育園 小竹向原」の“いい感じ”をわかっていらっしゃるかもしれません。

おまけ 調理室の皆さんとのおしゃべり

お昼の時、調理室の皆さんとおしゃべりさせていただきました。他園ではそんなこと、一度もありませんでした!
調理室の皆さん(栄養士さん)はこの園のことをよ~くご存じでした。この園が他の保育園とどう違うか、その魅力を語ってくださいました。それは、保育者とも保護者とも、ちょっと違う目線かもしれません。
その適切な表現にドキッとしました。お食事を作りながら、こどもたちのこと、先生たちのこと、よく見ていらっしゃるんですね。そもそも関心を持っていらっしゃること自体すごいですよね。
さらに、子どもを持つこと、母と娘の関係、などについて語り合いました。楽しかった!また、おしゃべりしたいなぁ。やっぱり、もっと知りたい「まちの保育園小竹向原」でした!

基本情報

園名

まちの保育園 小竹向原

住所

〒176-0004 東京都練馬区小竹町2丁目40-5

電話

03‐6909‐3201

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