八王子市裏高尾町の「東京都認定 みどり幼児園」を訪問しました

JR高尾駅から小仏行きのバスに乗ってほんの10分足らず。そこは、高尾の山のふもと。山からのみどりの風が吹く小さな園でした。

周りはぐるっと裏高尾の山。園舎はかわいい平屋建て(以前は小学校の分校だったそうです)。お庭にはツリーハウス。「おーい!」木の上から先生と子どもがお庭の子どもたちに声を掛けました。 子どもたちが歌う「みどりようじえんのうた」には~

♬きょうはどんな風が吹くかな~♬

という歌詞があります。その歌のとおり、清々しい5月の風が吹き、時間がゆったりと流れる「みどり幼児園」をご紹介しましょう。

みどり幼児園(※)の保育方針

※ 東京都から「幼稚園類似施設」の条件を満たしていると認められた保育施設のことです

  • 子どもの「遊び」を大切にする
  • 子どもの心に共感する
  • 子どもの育つ力を信じて見守る
遊びこむ

好きな遊びを好きなだけ遊びこめる時間と場所を用意すること。
子どもが主体的に遊べるように余計な口出し手出しを控えて見守ること。
それが幼児期の子どもたちを預かる私たちの一番大切な仕事だと考えています。
子どもたちは、遊ぶ中で、工夫をし失敗し再挑戦し、
仲間と知恵を出し合い力を借りけんかもして、たくさんのことを体験します。

少人数・たてわり保育

少人数のたてわり保育は、子ども同士のかかわりが深く、
どの子も自分を出しやすい環境です。
異年齢の子と接することで、誰でもできることやできないことがあるということに気づき、
お互いが成長します。
いわゆる発達障がいといわれる子どもたち、
人との関係面に問題を抱える子どもたちも、
このゆったりした環境で、ありのままの自分を出して自信をつけていくようです。
時には思いっきり喧嘩もしながらたくましく育つ子どもたち。
見守る先生も一緒に走り回って遊んでいます。

食育へのとりくみ

園庭には畑やたんぼ、果樹があり、
子どもたちは、野菜やお米、果物が育つのを楽しみにしています。
お誕生日会では、自分達でお料理をします。
また、月に2回ほどの給食は、安全で新鮮な素材を使い、
その持ち味を生かした調理法により
「ぜいたくな粗食」とも言える素材そのものの味が感じられるメニューを心がけています。

表現遊び

音楽による表現遊び。
園には打楽器を中心とした民族楽器がたくさん。
ジャンベやトーンチャイムは子どもに大人気です。
みんなが大好きな身体表現では、
ピアノに合わせてチョウチョになったり、木になったり、
ミミズやタニシになることも。

造形、絵画などによる表現遊び。
一人ひとりのやりたい気持ちを引き出します。
できあがったものがみんな違って当たり前。

みどり幼児園の沿革

1947年にお寺の境内で農繁期の託児所として開設。その後地域の人々の希望で常設に。
この地域でもっとも古い保育施設とのこと。形態としては幼稚園。NPO法人をたちあげ教職員と父母会で運営されています。

子どもたちの豊かで幸せな未来 のためみどり幼児園が大切にしていることは? 

どんな子どもでも否定されない、誰にでも苦手なことがある、よいところがあるということを子どもたちに知ってほしい。大人にも改めて考えてほしいと思っています。

また、何か困難にぶつかったときに、周りや人のせいにして立ち止まらないで、自分で解決方法を見つけて乗り越えていく力をつけてほしいです。
それは、人を頼らないということではなく、いろいろな人に積極的に関わって助けたり助けられたりしながらということ。

子どもたちが園にいるのはほんの3年ほどですが、少しでもそんな根っこを育てたいと思います

みどり幼児園のこどもたち

9:00をまわりました。登園時間です。こどもが一人、また一人と登園します。
大人も。。いろいろな方がみどり幼児園を訪れています。
近所の農家さん。朝採れの野菜を抱えて。先生に「はい、今日はこれね」と。
先生のお話だと、みどり幼児園に持ってきてくれたお野菜は保護者や先生、そして近所の方が分けてもらうのだそう。「ほうれんそう100円。ブロッコリー150円」などと紙にちょこっと書いてありました。
お野菜が並んだ朝のベランダ。

少しするとこどもたちが次々とおうちの人と登園してきました。こどもは先生と話してお部屋に入っていきますが、お母さん数人が何やら相談。聞いてみると、明日は誕生会で、おやつをお母さんたちが作るんだとか。近所の農家さんから頂いたたらい一杯のサトイモ。「フライドポテト」を作るんだとか。。「皮の外のもじゃもじゃしたヒゲを取るには棒を使って芋同士をかき混ぜるのが一番早い」とのこと。それも「○○さんにおしえてもらったのよ」とか。お母さんたちのお話は生活の知恵満載!

あら?園庭に福島ナンバーの車が入ってきました。福島の農家さんです。
今日は「田植え」をする、と聞いていましたが?
福島の農家さんとのお付き合いは震災後から。今年も田植えのお手伝いにわざわざ福島からきてくださったのだそうです。

なんと!みどり幼児園には、田んぼがあるんです!

Gさんは何でもできちゃう近所のおじいさん。今日までに園庭の田んぼを田植えにぴったりの土に仕上げてくれました。(こどもたちのどろんこ遊びが代搔きになるのだとか)この日の朝、ツバメが何羽も田んぼに舞い降りてきました。
「ツバメの巣作りに田んぼの土をもらいにくるんだよ、ちょうどいいんだな」
とGさん。

さて、10:30頃。お庭で集いが始まりました。
みんなで揃って体操をしました。こどもの元気につられて周りの大人も!

ベランダに腰かけたT先生のウクレレ?を伴奏に、歌を歌いました。
「♪きいろい風船 ルルル~そっと風にあげたら~♪」
声を張り上げる子は一人もいません。 田植えのお手伝いに来てくれたお母さん、お父さんも。周りの大人が優しい笑顔で見つめます。今日は青空保育ですね。

さあ、いよいよ。田植えです。みんなでお庭の田んぼに向かいます。

こどもはどんどん田んぼの中に入っていきました。農家さんがひもをぴーんとひっぱって、印をつけたところをおしえてくれます。それがイネの間隔なんですね。

私も生まれて初めての田植えを経験させていただきました。指の間にイネを大事に持って、そうっと泥の中においていきます。

たんぼの土って、なめらかでとってもいい 気持ち
秋には美味しいお米が実りますように!

こどもが14人のみどり幼児園。この日は囲んだテーブルの好きな席に座ります。 お当番が2人。お弁当を乗せたワゴンを運んだり、

布巾を濡らしてテーブルを拭いてくれたり、

「頂きます」のご挨拶もリードしてくれました。

朝、近所の農家さんが分けてくれたお野菜で先生がお味噌汁を作ってくれました。お弁当と一緒に頂きました。あったかくて美味しいお味噌汁でした。

お帰りの前、先生が絵本を読んでくれました。この春、入園したばかりの3歳さんも 落ち着いてよーく見ていました。どの子も楽しみながらしっかり聞いていました。 今日絵本を読んでくれたのは園長先生。園長先生の笑顔も声もステキです!

園訪問レポート

こどもも 大人も あなたはあなたのままでいいのよ、と受け入れてくれる、みどり幼児園はそんな空気で包まれていました。

今、少子化対策として国はいろいろな施策を進めています。働く女性が子どもを預けられるように長時間の保育施設を増やし、女性だけが育児を担うことのないよう男性も育児休暇を取れるよう、企業に働きかけています。

でも・・・問題は「子どもを産むこと」を若い人たちが選ばなくなっていることではないでしょうか。子どもを産むことは大変だ、お金がかかる。自分の人生にとってメリットよりデメリットが大きい、そんな風に感じている人もいるのではないでしょうか?

そして・・・、みどり幼児園の大人たちはちょっと違う気がします。

こどもに美味しいものを 食べさせてあげたいから、美味しいおやつ(サトイモのフライドポテト)を作ってあげたくなっちゃうのだ、と、たらいに山盛りのサトイモを棒でかき混ぜていたお母さんが仰っていました。

みどり幼児園に来るまでは子育てが孤独だった、でもここは違う、と仰っていた方もいました。 子どもに経験させてあげよう、という田植え。でも、終わりの頃はお母さんたちも裸足になって泥の中に入っていました。田んぼの周りはこどもも大人もみんな笑顔でした!

大げさに言うと~

みどり幼児園には、社会に子どもが生まれてくることの意味。
明るさや豊かさ。子どもを育てることの幸せの原点があるような気がします。
ここでは、小さいこどものいる暮らしは楽しいな、いいものだなと、大人たちみんなが思っているような気がします。
ここの大人は(先生も保護者も、そして近所の大人も福島の農家さんも)みんな、心の底からこどもを慈しんでいる、そう感じます。

豊かな裏高尾の環境で、子ども達は自然を相手に思い切り遊ぶのでしょう。虫取りも木登りも。好奇心が刺激され、遊びこむことでさらに探求心も協調性も育つでしょう。

先生たちはこどもの遊びを無理にひっぱろうとせず、こどもの持っている時間の流れを大切にできる環境を工夫する、と仰います。

子どもを見守ろうとするゆったりとしたまなざしが、みどり幼児園の優しい空気の源かもしえません。そんな空気は親にも伝わるでしょう。ウチの子はウチの子のペースでいいのかな、急がせなくてもいいのかな、と。

一方、「信じて見守る」ってキレイな言葉だけれど、時には親にとっては辛いことも・・。

信じられなくなっちゃう時。見守れず親が焦ってしまう時。。一緒に見守ってくれる大人がいると安心かもしれません。「大丈夫だよ」と言われたら、ホントは心配でたまらなかったパパやママは泣きたくなっちゃうかもしれません。

孤独ではないから、先生や保護者仲間がいるから、一緒に「子どもの育ちを信じて見守って」いけるのかもしれませんね。

基本情報

園名

東京都認定 みどり幼稚園

住所

〒193-0841 東京都八王子市裏高尾町674

電話番号

042-661-8147

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